宝石を喰らう

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 友人は、目の前で巨人に踏み潰され、粉々に砕け散った。その、彼女の血と肉と骨が破裂した瞬間、しかし彼女のそれらは美しい宝石に変わっていた。
 翡翠。琥珀。ダイヤ。トパーズ。エメラルド。サファイア。ガーネット。ペリドット。クリソベリル。アクアマリン。ラピスラズリ。ソーダライト。ローズクォーツ。リビアングラス。ヘミモルファイト。アンダリュサイト。アレキサンドライト。
 余りと言えば余りにも、砕けた彼女の体の中身は美しかった。

 私も彼女の様に、美しいもので満たされているだろうか。

 屈んで、私は砕けた彼女の宝石の一つを拾い、震える手でゆっくりと、自分の口の中に入れてみる。
 味を噛みしめるよりも前に、巨人は私も踏み潰した。
 聞こえるのは、血が吹き出し、骨が砕かれ、肉が裂ける音。
 すぐに全ては暗転し、感覚の一切が永劫に消失する。


 私には、何が入っていただろうか。
ファンタジー
公開:19/07/09 22:43
幻想 ホラー 不思議 不気味

宇津木健太郎( 我楽多街 )

優しい世界の話。
遥かなる宇宙の話。
夏の陽だまりの中の話。
世界を覆い尽くす青空の話。
あなたの隣に居る私の話。

そんな、日常から宇宙の果てまで存在する、不思議で空想的な話を紡いでいきます。

時々ホラーも書くかも知れないけれど。

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