硝子の夢

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 硝子の玉に閉じ込められて、何処までも透明な空の下で息をする。
 そんな夢を見た。

 硝子玉は落下を続ける。
 雲を突き抜け、渡り鳥を潰し、船を砕き、魚を殺し、それでも玉の落下は止まらない。硝子玉はドンドンと、下へ下へと沈んでいく。
 幾ら呼吸を続けていても、息が詰まる事は無かった。
 やがて水面からの光は届かなくなり、エメラルドグリーンから群青、紫、そして漆黒の闇へと色が変わっていく中で、私はやっぱり息をする。
 着底する事の無い、無限永久に続くやも知れない硝子玉の中で、ようやく私は気付く。

 きっと、赤ん坊はこんな夢を見るんだ、と。
ファンタジー
公開:19/07/10 21:50
幻想 不思議

宇津木健太郎( 我楽多街 )

優しい世界の話。
遥かなる宇宙の話。
夏の陽だまりの中の話。
世界を覆い尽くす青空の話。
あなたの隣に居る私の話。

そんな、日常から宇宙の果てまで存在する、不思議で空想的な話を紡いでいきます。

時々ホラーも書くかも知れないけれど。

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