美味しい蚊

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「早くあれを出してくれよ」
男が言った。
「分かってるよ。今だしてくるから待ってて」
もう一人の男がそう言うと、キッチンから一つのタッパーを持ってきた。
中には発酵された蚊が大量に入っている。
「お、ありがとう。まったく、蚊を発酵させるなんてすごい発想だよ」
男はそう言うと、早速一匹の蚊を口に運んだ。
「独特な風味があるが、奥の方に旨味があってうまい。癖になるんだよな。でも数が減ってきてないか?」
「そうなんだよ。去年仕入れた蚊が尽きはじめているんだ。早めに補充しないといけないんだよ」
すると耳元で蚊の羽音が聞こえた。
二人は音の方向を向くと、大きく喉を鳴らした。
6月のよく晴れた日だった。
ホラー
公開:19/07/10 14:07
更新:19/07/11 13:01

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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