目の中の世界

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野良猫を見つけた。
その目の美しさに思わず釘付けになる。
虹色の虹彩。とても鮮やかだ。
しばらく見つめていると猫が、
「もう勘弁してくれ」というようにこちらから目を背けた。けれどその一瞬、違和感を感じた。
その正体を確かめるため、もう一度猫に近づき、その目を見る。

虹色の虹彩だと思っていたそれは、色とりどりの花の模様だった。チューリップ、マリーゴールド、パンジーにネモフィラ。まるで目の中に花畑が広がっているみたいだ。
──そう思った瞬間。
体が吸い込まれるような感覚に襲われる。天地がひっくり返る。

目を覚ますと、辺り一面に花が咲き乱れていた。先ほどの猫の目の中にあった花畑そのものだ。

茂みの中から一匹の子猫が現れた。この猫にも見覚えがある。先ほどの……。
この世界は、あの野良猫の、過去の記憶が形を持った場所なのかもしれない。
すり寄ってきた子猫を撫でてやると、小さくにゃあ、と鳴いた。
ファンタジー
公開:19/07/09 23:52

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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