耳鳴り

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「……ピイィィィィー………………」
その音で、目が覚めた。
あ、そっか。わたし、授業中に寝落ちしちゃったんだ。
目覚めたと言っても意識が戻っただけで、まぶたは重くて上げられない。それに、もうちょっと寝てたい。
この先生の授業なら、寝てても大丈夫。なはず。
誰も聞いてないのに先生は話している。
うん、大丈夫だ。
この先生の授業はいつもみんな寝てる。そして先生も全然それを注意しない。ていうか気にしてない。
眠すぎて体が動かない。突っ伏した自分の頭で右手が机に押しつけられ、ちょっと冷たい。
その時、足音が近づいてきた。
やばっ。起きなきゃと思ったけど、だいぶ疲れてるのか頭が上がらない。
先生がわたしの前で止まり、わたしの右手をつかんだ。
…先生のすすり泣く声が聞こえた。
わたしを再び睡魔が襲った。

心停止の信号が響く病室で、母親は事故死した娘の、冷たいベッドの枠に触れた右手を握りしめ、泣いた。
ミステリー・推理
公開:19/07/08 22:35
更新:19/07/08 22:35

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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