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それは撫でると鱗だった。
少しぬめっとしていて固い鱗。
猫の顔から下の左側だけが鱗で覆われている。
たくさんの小さな鱗が折り重なって、リビングの照明に反射するとキラキラ光る。
猫は平気な顔をして右側だけを丁寧に舐めている。
痛くないのか?と声をかけても毛繕いに夢中で、聞いていないのかもしれなかった。
床に落ちていた鱗を窓越しに透かして見ると、鱗は指先から伝わる温度で柔らかくなり、色を見せた。
窓に貼るとステンドグラスのように輝いている。
鱗は毎日表情を変える。
僕の内面と連動するように。
猫は平気な顔をして、毛繕いをしている。
床にまた、鱗がそっと落ちていく。
その他
公開:19/07/08 21:19

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