音符を飼う

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近所のお祭りに訪れると、やけに喧しい店があった。
その店のせいで屋台の呼び込みの声も聞こえない。とんだ営業妨害だ。
一体何が売ってあるんだ?
興味本位で覗いてみると店先の水を張った桶の中で音符が泳いでいた。
「いらっしゃい!今朝生まれたばかりの新鮮な音符だよ!ひとつどうだい?」
店主に推され、私は訳が分からないまま音符を買った。
こんなもの、どうすればいいんだろう?
家に着くととりあえずあの店と同じように、音符を水槽の中に入れることにした。
母に怒られた。
「音符を飼うのなら水槽じゃなくて吹奏に入れなさい!」
そう言って私のトランペットの中に音符を入れた。

音符は私のトランペットに住むようになった。
今日も川縁で音を鳴らすと、嬉しそうに音符が跳ねた。
音符は成長すると音楽になって飛び立って行くという。
私はこの音符に世界中を飛び回って欲しいという願いを込め、今日も練習に励むことにした。
公開:19/07/08 18:40

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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