猫道を抜けて

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竹箒の音で目が覚める。空はようやく今日の光を受け入れ始めた頃だろう。布団のなかで私は、掃除するお義母さんの姿を想う。

毎日のことだ。

猫道と呼ぶ、我が家の前から海に抜ける小道を掃き清める音がする。嫁いできた時に尋ねた。名前の由来や掃除する理由について。でも「それ聞く前にお義母さん亡くなっちゃったのよ」と、お義母さんはあっけらかんと笑った。

私は寝ぼけ眼で竹箒を持つ。そして、シャッシャッ、と音を重ねる。

この町には猫が多い。防波堤で将棋を指す老人の足元には猫が七匹ばかり。可愛がられている風でもなく、猫からエサをねだることもない。

「お義母さん、手伝います」

息子のお嫁さんがつっかけで出てきた。言わずとも動いてくれるのが嬉しい。でも、すこし驚いたかな。私が動かずとも鳴り続ける、竹箒の音に。

「これ聞く前にお義母さん亡くなっちゃったのよ」

猫が多い。とも、最近は思わなくなった。
ファンタジー
公開:19/07/08 17:24

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