そらねこ

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死にたい。発注数を一桁間違えた。課長に呆れられ、同僚に罵られた。明日行きたくないなぁ…

朝になると私はコテツになっていた。コテツはうちの猫で、白い毛に墨汁がはねた様な水玉模様を持っている。
なったものは仕方ないと、とりあえず寝転んだ。シャレではなく。1DKの天井はいつもより高くて、水色の壁紙と窓の中の青空がつながって飛んでる気分。若草色の絨毯が、曲線を帯びた背中を包み込んで思わず「にゃーん」が漏れた。
もう一生このままでいい。この幸せがずっと続いて欲しい。
そこで夢から覚めた。今度こそ本当に朝が来て、私は当たり前に私で、コテツはいつものように隣で寝ている。

出社するとやっぱりみんなの目は冷たく、お局に嫌味を言われた。
私はハイと良い返事をしながら一点を見る。
コテツの幸せを守ってあげられるのは私だけだ。頑張って働いてご飯を買ってあげなきゃ。
窓の外には、雲ひとつない青空が広がっていた。
その他
公開:19/07/09 12:53

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