二基のビッグベン

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 ライブハウスの前売り券の自動販売機を見上げている。土日分は21時から、まず1時間分の券が2500円で、その後は15分ごとに500円だという。僕は、この延長分を何枚買えばいいのかを迷っていた。
「当日券もあるから、そのときでいいんじゃないの?」
 と、ユニオンジャクをマントみたいヒラヒラさせた人たちが言っていたので、僕は安心して列車に乗った。
 眼下に延々と続く煙突は、高架線を走るこの蒸気機関車に負けないくらい煙を吐いていて、夕方で、その全てがシルエットだった。進行方向右手に丸くて白い時計が見える。数字の6の部分が曜日表示の窓になっていて黄色いゴチック体で「金」と出ている。左手にも同じ時計があって、そちらは青いゴチック体で「土」と書いてある。
 僕はライブへ行く前に一眠りしたかったので、「金」の側のホームへ下車して、一泊した。でも、その夜は蜂と蟻とが部屋に入ってきたので、全然眠れなかった。
その他
公開:19/07/09 10:52

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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