手前味噌

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「おっ!今日の味噌汁、いつもより美味しい。味変えた?」
夫の質問に私は自信満々に後ろ手に隠していたものを見せた。
「手前味噌?」
『このお味噌はね。褒めれば褒めるほどその味が良くなっていくの。さっき貴方が褒めてくれたでしょう?だからそのお味噌汁。さっきより美味しくなっていると思うわ』
「本当だ…さっきより風味が僕好みになっている」
『だから、これからは私の料理をもっと褒めてね。ああ、ちゃんと心を込めて褒めないと味は良くならないから』
「分かったよ。これからはちゃんと味わって食べることにするよ」
嘘である。このパッケージは私が作った偽物だ。
褒めると味が良くなる?そんな味噌は存在しない。
ただ、夫が私の料理を味わって食べてくれる。その上で褒めてくれるのであれば、私の料理のモチベーションも上がる。
だからこそ〈手前味噌〉という商品は嘘であるも、料理が美味しくなるという意味では嘘はついていない。
公開:19/07/07 18:18

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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