まねきねこ (テルピカ町は猫びより④)

「改装だって？　やけに景気が良いじゃねぇか」
とある町の商店街。売上も客足も年々落ちていく一方の中、右隣の鮮魚店が改装するという。
「目利きには自信があるからね。実は某有名料亭の主人に目をつけられて」
「大口の客がついたってわけか」
「これには秘密があるのよ。青果店の親父に教えてもらったのさ」
青果店はうちの左隣だ。ここのところ連日お客さんで賑わっている。どうやら苦しんでいるのは精肉店のうちだけらしい。
「で、秘密ってのは？」
「猫よ」
そういえば、どっちも店先で猫を飼い始めていたな。
「招き猫ってやつか？」
「ご名答。猫に右手をあげる芸を仕込んだのさ。青果店の親父は左手だ」
なるほど。じゃあ、うちは両手をあげる芸を仕込むとするか。

そんなわけで猫を飼った。欲張ってお手上げになった、というオチだろって？　それがよぉ、どうやら俺……。
猫アレルギーだったみたいで、手をこまねいているだけさ。