靴屋のシンデレラシューズ(下)

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成金デパートのドラ息子が、もう片方作ってくれと、置いて行った靴。
女物の白いハイヒール。型紙も材料も残ってる。

『結婚したい女は、別にいる』
あんな顔も出来たのか。
わがままで、横柄で、軽薄で。ダメ男の見本だと思った。したい女がいるなら、他に手を出さず、さっさと結婚すれば良いのに。
「片割れを持った女と結婚する、か」
馬鹿が余計な事を。根が甘ったれの弱虫。困った時だけ頼る癖は、昔から一緒。今度こそ、本気で突き放すべきだ。


「作ってやったぞ。感謝しろ」
「恩に着る。……あと、」
「あと、何」
「その靴履いてくれ」

ぽかんとした。それって――。
「お前のサイズだろ。履いて、俺と結婚してくれ」
「……まさか、今回の騒ぎ」
「長い付き合いだし、きっかけがなきゃ無理だと思った。こう見えて、案外俺は一途だぞ。それで、返事は?」
自業自得だ。どうしようもない奴だと判ってて、縁を切れなかった私の。
ミステリー・推理
公開:19/07/08 12:00
更新:19/07/08 12:00
シンデレラ:王子様と魔法使い

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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