五反田

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柳沢は、五反田にある古めかしいネオンの天使の看板が印象的なバーに立ち寄り、友人のAと一緒に飲んでいた。
友人A は普段から物静かでどんな人にも差別なく優しい人物だった。そして、交友関係の浅い柳沢にとって、唯一信頼できる友人だった。
「それで、今回のプロジェクトはどう?うまくいきそうか?」
友人は、ウィスキーの入ったグラスをかきまぜた。
柳沢は、不意をつかれたように、額に手を当てた。
「まあ、なんとかなりそうだけど、でも、プロジェクトを成功させるには、それなりの犠牲が必要なんだよ」
「犠牲ね…」
友人はそう呟くと、家の庭の下で眠る数体の死骸の顔を思い浮かべた。
「どうかしたのか?妙な笑みを浮かべて」
柳沢はポケットに忍ばせたナイフを膝の上にこっそりと置いた。
親友だからこそ、最近の友人の些細な形骸にきがついていた。友人が酒に酔った後、自らの正義は赤に染まり、深い友情は思わぬ形となった。
公開:19/07/08 23:00

神代博志( グスク )









 

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