雲を塗る

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彼は雲を塗ることができる。
赤、青、黄、緑、黒。
比喩ではなく、空に浮かぶ雲を筆でなぞると、実際に色がつくのだ。
筆と雲との間がどんなに離れていても、不思議と着色される。
ただ、これは頻繁に行われることではない。
そもそも雲をカラフルにする意味はあまりないし、大勢の人にバレると面倒でもある。
唯一、雨を降らせるためであれば、惜しみなく雲を黒く塗る。
そのため、彼は誰に頼まれたわけでもないが、干ばつしている地域をまわり雨を降らせている。
しかし、彼も人間。
たまには違う色を塗ってみたくなる日もある。
あなたの住む地域が日照りに悩まされているのなら、もしかしたらカラフルな雲が見られるかもしれない。
その他
公開:19/07/07 21:45

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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