十五の猫

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猫背の店主が切盛りする大衆食堂熊猫は、猫の額ほどの土地に建ち、レジの横に鎮座したパンダ柄の招き猫の他に特徴は無く、猫舌なせいか、ぬるい料理を出すが、不思議と繁盛していた。

「いつも繁盛していて羨ましいね」
「忙しくて参りますよ、猫の手も借りたいくらいだ」
猫っ毛な常連客の皮肉めいた小言に、店主が謙遜して答えると、束ねた手持ち花火に火をつけたような音と共に「キャッ」と悲鳴が聞こえた。
そちらに視線を向けた全員、己が目を疑う事となる。

招き猫の手が火を噴いて飛び回り、次々と客にパンチを叩き込み始めたのだ。
猫も杓子も逃げ回り、とうとう猫の子一匹いなくなると、その日を境に客足は途絶えてしまった。

ショックで三日三晩寝込んだ店主は、このままでは駄目だと、招き猫に猫まんまを備え「繁盛店に戻してくれ」と願うと、店は元の活気を取り戻した。
但し、小言を言った常連だけは、借りてきた猫になった。
ファンタジー
公開:19/07/06 15:10
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