万能の風

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「本当にここでいいのか?」
「うん。ここまで連れてきてくれてありがとう」
僕は船でここまで送ってくれた友人に礼を言い、小さな島に上陸した。この島では、万能の風が吹くという。その風を受けると、どんな難病でも治るそうだ。僕はそれを求めてここにきた。いや、本当は求めてなんかいないのかもしれない。ただ海を見ながら死にたいのかもしれない。
島に入って数分して、小さな砂浜を見つけた。体が疲れていたということもあり、すぐにその砂浜で仰向けになった。視線の先には、鮮やかな空と白すぎる雲があった。起き上がろうと体を動かした刹那、冷たい風が体に吹き抜けた。さっきまでうるさかった虫たちが嘘のように黙って波音しか聞こえない。僕はもう一度砂浜に体を預けた。なんだか体が楽になったような気がした。
その他
公開:19/07/06 14:22

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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