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「今日も暑っついな~」
入道雲を仰いで、顔をしかめた。
雨降らないと、庭の水やりが待ってる。正直面倒だけど、人間が暑い様に、植物も暑い。自分で動けないって、きついよな。
庭木はホースで散水、玄関の鉢はジョウロで撒く。
「お、じいちゃんの花」
アッツ桜。本来春の花だけど、うちじゃ夏に咲く。わざわざ暑い盛りに咲かなくてもいいのに、名前に掛けたみたいだ。形も色も似てないし、桜の仲間でもない。でも、日本人の『花』って、やっぱり桜なんだね。特にこの花は、桜を付けたかったんだろう。売り出された当時の心情も解る。
『じいちゃんの花』って呼ぶのは、じいちゃんが植えたわけじゃない。ただ、ある種形見ではある。
アリューシャン列島のアッツ島。この花の名前の由来。太平洋戦争で、日本軍が初めて『玉砕』した島。
じいちゃんが帰らなかった島。
軽く手を合わせて水をやる。春に玉砕せず、夏に帰った。そう思う事にしてる。
入道雲を仰いで、顔をしかめた。
雨降らないと、庭の水やりが待ってる。正直面倒だけど、人間が暑い様に、植物も暑い。自分で動けないって、きついよな。
庭木はホースで散水、玄関の鉢はジョウロで撒く。
「お、じいちゃんの花」
アッツ桜。本来春の花だけど、うちじゃ夏に咲く。わざわざ暑い盛りに咲かなくてもいいのに、名前に掛けたみたいだ。形も色も似てないし、桜の仲間でもない。でも、日本人の『花』って、やっぱり桜なんだね。特にこの花は、桜を付けたかったんだろう。売り出された当時の心情も解る。
『じいちゃんの花』って呼ぶのは、じいちゃんが植えたわけじゃない。ただ、ある種形見ではある。
アリューシャン列島のアッツ島。この花の名前の由来。太平洋戦争で、日本軍が初めて『玉砕』した島。
じいちゃんが帰らなかった島。
軽く手を合わせて水をやる。春に玉砕せず、夏に帰った。そう思う事にしてる。
その他
公開:19/07/06 13:40
アッツ桜
1943年5月29日
アッツ島玉砕
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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