天国へ捧げるカクテル

7
9

「マルガリータです」
置かれたグラスの小ささにガッカリした。中ジョッキ2杯分の酒がこれっぽっちか。似合わないことはするもんじゃない。
グラスの縁の白い粉は砂糖か?
わからず軽く舐めると塩だった。ちびちび飲むのもどうかと思い、一気に飲み干すと喉の辺りが熱く痺れた。
「これ、なんて酒?」
思わずバーテンダーに尋ねてしまった。
「テキーラです。度数は40%ですから、ビールの10倍ですね」
「亡くなった妻がこれを飲んでみたいって言ってたんだ」
「そうですか」
「苦いな」
「マルガリータは天国へ捧げるカクテルとも呼ばれているんです」
バーテンダーの声が遠い。
カクリとカウンターに崩れると、空になったグラスに蝶がとまっていた。

こんなとこで寝ちゃ風邪ひくわよ。

「わかってるよ」
体を揺らす手の温もりを肩が覚えていた。 
これが胡蝶の夢ならそれでいい。
お前に会えるなら、またテキーラを飲みにくるよ。
恋愛
公開:19/07/06 13:38
更新:19/07/06 21:31
スクー テキーラバタフライ

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容