白い耳飾りの少女

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 あ、救急車。

 ある夏、海辺の町で僕は恋をした。
 洋館の二階、窓辺の彼女の美しい横顔。白い服と耳飾り。
 声を掛けたが窓は遠く、彼女には聞こえないようだった。それでも僕は窓の下を通る度、窓辺の彼女に声を掛け続けた。
「今日も暑いね」
 ある時、彼女の顔が僅かにこちらに向いた。僕は嬉しくて手を振った。それに気付いたのか、ゆっくりと彼女が僕の方へと顔を向ける。白い耳飾りが揺れる。
 ようやく彼女と目が合ったと思った瞬間、彼女の頭がごろりと転がり落ちた。
 彼女は腐れた死体だった。耳飾りと見えたのは脳を食って耳から出て来た蛆だった。
 意識を失いつつあった僕の耳に、救急車とパトカーの音が聞こえた。

 僕と凄惨な事件の関りはそれだけだ。
 なのにサイレンの音が聞こえる度に彼女が部屋に現れるようになった。

 ただ座っているだけなのだが、酷い臭いで困っている。

 
 
 

       
ホラー
公開:19/07/07 15:16

堀真潮

3月4日、浜田山ベリーズティールームにて、「物語のお茶会」開催。
美味しい紅茶とケーキ、堀真潮の400字SSと朗読を楽しむ会です。 

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