猫柳 (或いはクライドルフの猫)

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──ウチ、猫がいるから。
そう断られ続けて幾星霜。ついに彼女の家に来た。
あれ? 猫は? 
──無視。
嘘かよ。
──珈琲飲む?
飲む。部屋を観察しながら待つ。出窓の鉢植えの、しなやかな花木には白銀のふわふわした毛に覆われた小指の先ほどの実が鈴生りだ。お。猫柳かぁ。婆ちゃん家にもあったなぁ。
──触らないで!
まだ手も握ってない。振り返ると彼女が、お盆をちゃぶ台に置きながら俺を睨んでいる。お盆には珈琲二つと極小の皿が並んでいた。
──タマ・シロ・ミケ……! みんな大丈夫?
だから猫はどこだ。俺を尻目に彼女は花木に猫撫で声で囁いた。
──ごはんよ。
その声に白銀の毛玉たちは、ぐぅ。と伸びをして枝からにゃんぱらりと彼女の掌へダイブ。そのままちゃぶ台へ。ペロペロと皿の乳を美味そうに舐める姿は、どう見ても猫なので、彼女が俺を家に呼ぶのを嫌がり続けた気持ちがわかった。俺、雑だし。ねこふんじゃうな。
その他
公開:19/07/07 03:24
更新:19/07/08 07:30

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
https://note.com/nekometubaki



 

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