ぼんちのぼん

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すた。すた。すた。
時計は朝の3時。昨日から降り続けた雨が猫へと変わった。白いの黒いのトラに三毛。ぼんやりとやわらかく光る、毛糸のような猫たちが畑の上に降っている。
夏休みのぼくはお盆休みの両親と一緒に、おじいちゃんの家に遊びにきた。小さな山に囲まれた大きな湖のある町。盆地の夏は暑いけれど、夜のひんやりはうれしい。
スイカを食べてゴロゴロ。とうもろこしをかじってゴロゴロ。かみなりゴロゴロ。雨でたくさんのゴロゴロをしたから、とても早い時間に目が覚めた。
早起きのおじいちゃんが、まだ暗い畑の前で提灯を揺らし、降る猫たちを迎えている。
「にゃまんだぶにゃまんだぶ」
おじいちゃんの呟きが楽しくてぼくも隣で真似をした。すると白い仔と目が合った。おばあちゃんだ。
ぼんちのぼん。ぼんちのぼん。
そう歌いながら、いつも頭をなでてくれたおばあちゃん。
おじいちゃんが畑の中に駆け出してゆく。
明けないで。夜。
公開:19/07/05 11:35
更新:22/07/14 16:06

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