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複数のビルの『定礎』の真裏にあたる壁面に『勇気』という小さな落書きのあるのが見つかった。
新聞の地方欄に街のこぼれ話のような扱いで掲載された記事を、私はくすぐったいような気分で読んでいた。
生前の父は『定礎』を開け、そこに収められている物品の一部を取り出してコレクションすることを趣味としていた。『勇気』はその時の印で、因みに父の名前でもある。父は病床でそのことを私に打ち明け、こう遺言した。
「私の遺骨は手元供養とし、四十九日の後〇〇の定礎に納骨してくれ」
『定礎銘板』を外す方法などを記したノートと、コレクションとを引き継いだ私は遺言通り、ビルの『定礎』の中身を取り出し、ZIPロックに入れた父の粉骨を詰めこんだ。以来、取り出した『定礎』の中身を、他の『定礎』の中身と入れ替えることが趣味となった。署名は『勇気Ⅱ』。
私の遺骨は、自宅の『定礎』へ納骨するようにと、遺言するつもりだ。
新聞の地方欄に街のこぼれ話のような扱いで掲載された記事を、私はくすぐったいような気分で読んでいた。
生前の父は『定礎』を開け、そこに収められている物品の一部を取り出してコレクションすることを趣味としていた。『勇気』はその時の印で、因みに父の名前でもある。父は病床でそのことを私に打ち明け、こう遺言した。
「私の遺骨は手元供養とし、四十九日の後〇〇の定礎に納骨してくれ」
『定礎銘板』を外す方法などを記したノートと、コレクションとを引き継いだ私は遺言通り、ビルの『定礎』の中身を取り出し、ZIPロックに入れた父の粉骨を詰めこんだ。以来、取り出した『定礎』の中身を、他の『定礎』の中身と入れ替えることが趣味となった。署名は『勇気Ⅱ』。
私の遺骨は、自宅の『定礎』へ納骨するようにと、遺言するつもりだ。
その他
公開:19/07/04 19:38
更新:19/07/05 13:30
更新:19/07/05 13:30
書き出しだけ大賞 二期
シリーズ「の男」
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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