ケトル・シー

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雑貨屋で良いケトルを買ったので、早速お茶を淹れる事にした。
黒いホーローの、ころんと丸いフォルム。優雅な取っ手。注ぎ口は懐かしの笛付き。蓋に金のつまみが乗っている。
蛇口から水を注ぐと、手応えがおかしい。身震いしそうというか、とにかく嫌がっている感触だ。
不良品?と思いながらも、火に掛けた途端。
「ニギャッ」
笛が鳴った。
いや鳴いた。鳴いた上、ガス台から宙返りして流しに着地するなり、中の水を震い出した。
「フーッ!!」
威嚇している。どう見ても猫だ。取っ手は尻尾に、注ぎ口はつんと澄ました(現在そうでもないが)顔になった。黒い毛皮の喉で、金の鈴がちりちり揺れる。
「ぶんぶく茶釜の、猫版ってあるんだ」
――バリ!
引っ掛かれた。
「キャット・スィー!」
立ち上がった。しかも喋った。
ケット・シーかな。外国の化け猫か妖精だったはず。
「むしろ、ケトル・シー」
――バシッ!
猫パンチを食らった。
ファンタジー
公開:19/07/04 18:49
CaitSith/ケット・シー アイルランドの猫妖精

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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