ソクラテス

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「私は、まるで操り人形のように、彼女の声が右へ左へと震える度に、その方向に体を動かしては、愛を享受しようとしている。
それほどまでに、私は、愛の沼に足を沈めてしまっていたのか。何と愚かで、臆病な生き物なんだ。この世界の骸と一緒に行進をし、いつのまにか、身をそぎ落とされて、地と一体化してしまった輩と全く同じではないか。愛とは形がなく、人間の理性までも支配する猛毒そのもの。ああ。何と愚か。これ以上、話を続けても、彼女のことばかりを募る言葉ばかりしか形成されず、尊い命を犠牲にしてまでも、それを守ろうとする一国の兵士のような忠実さ。私は、いつの間に、浮かれた気分に攫われていたのだろうか」
ソクラテスは天に手をかざし、指の隙間から零れる微笑みを眩しく思った。
その他
公開:19/07/06 01:00

神代博志( グスク )









 

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