砂漠の花

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 世界のどこかの砂漠に、一輪のとても美しい花が咲いている。

 翡翠色をしたその花は、宇宙の遥か彼方から飛んできた隕石に付着した種子が萌芽したものであると、旅人達の間ではまことしやかに噂される様になる。
 それからいつの間にか、花を探し求める旅人が後を絶たなくなった。しかし彼らは皆行方知れずとなり、誰も花どころか、その痕跡さえも見付ける事が出来ない。
 長年花が見付からないまま、噂には尾鰭が付き始める。
 やれ、手に入れれば願いが叶う。
 やれ、煎じて飲めば不老不死になる。
 やれ、宇宙の真理を得られる。
 しかしやっぱり誰も見付けられないので、花は伝説として語り継がれ、誰も噂を信じなくなり、全ては有象無象の御伽噺の一つとして語られるに終わり、誰も花の真偽さえ見定められぬまま、人類はやがて衰退し、終焉を迎えた。

 そんな事とは全く無関係に、今日も花は砂漠のどこかで、静かに咲いている。
ファンタジー
公開:19/07/05 21:37
幻想 SF 伝説

宇津木健太郎( 我楽多街 )

優しい世界の話。
遥かなる宇宙の話。
夏の陽だまりの中の話。
世界を覆い尽くす青空の話。
あなたの隣に居る私の話。

そんな、日常から宇宙の果てまで存在する、不思議で空想的な話を紡いでいきます。

時々ホラーも書くかも知れないけれど。

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