空の紫陽花

6
7

梅雨の晴れ間に夫の墓参でもと、出家、いえ家を出たのは、昼時でした。
先祖伝来の古い墓を綺麗に直すのが、亡き夫の念願で、長年働き詰め、漸く叶えた矢先、病を得て果敢無くなりました。まるで洒落の様ですけれど、湿った話の嫌いな質でしたので、私も沈んだ語りにしたくないのです。

これも夫の好みで、墓には花を植えております。
孫が花屋に勤めた兼ね合いもあって、それこそ売る程に沢山。今頃は、紫陽花が見事に咲いております。切って供えるにも便利で、地産地消ですよ。……おっとまた軽口。これでは話が捗りませんわね。

墓へ着きますと、お坊様が、紫陽花の前に佇んでおいででした。夏空の様な青で、夫も私も気に入りの株です。
「空の青ですね」
同じ事を思って下さったのが嬉しかった。
写真をと仰るので、一緒に記念撮影を致しました。ついでにお経もあげて頂き、良き墓参になりました。
中々、男前でした。夫は妬きましたかしらね。
その他
公開:19/07/05 21:11

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容