雨の独り言

0
4

突然雨が降り出した
僕は雨から逃れるために走り出した
周りを見る
皆、呆然と立ち尽くし雨に打たれている
このままでは風邪を引いてしまう
僕は皆の手を引き、走り出そうとした
皆はそれを拒絶した
そして独り言のように呟いた
何でお前は走ることが出来るんだ
その目は虚ろで生気がなかった
僕は気付いた
これは心の雨だ
心の雨は人をその場に留めてしまう
僕は答えた
僕は弱い人間です
何度もこの雨に打たれました
この雨はいずれ止むという事も知っています
でもいつ止むか分かりません
だから僕は走ることにしたんです
僕の言葉に皆の目に生気が戻ってきた
のろのろとではあるが歩き始めた
僕も歩き始めた
僕の歩みは遅い
皆が歩くスピードは僕の走るスピードだ
そんな僕に皆は苦笑いを浮かべ、歩幅を合わせてくれた
いつしか雨は止み、皆が笑顔を浮かべていた
僕はその笑顔こそが心の雨から身を守る傘であることを知っている
公開:19/07/05 18:12

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容