寿命出世時申告制社会の誕生日

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 寿命は出生時申告制になった。
 夫婦は、息子が申告寿命A(短期)を無事に通過できたことを胸に秘めつつ、16歳の誕生日を祝っていた。息子は両親が涙を流して喜んでいるのを見て、なんとなく、今日が自分のAライン日だったのだと感じている。

 二年後の成人式の時、僕は両親に、寿命B(中期)、寿命C(長期)年齢の開示請求をするだろうか? と考える。寿命を分かっていた方が、それまでの時間を有意義に使えるような気もする。でも、B寿命が35歳とかだったら、親を恨んでしまうかもしれない。僕をそんな穀潰しと予測していたのか、と。
 父のB寿命まであと8年。母の方はあと10年だ。二人とも一生懸命働いて、家族の生存コストを納税している。現状の国勢なら、よほどのことがない限りはみんなB寿命を通過できるだろう。
 僕も早く自分でコストを払えるようになって、病気や事故に気をつけて、C寿命まで全うしたいと思っている。
SF
公開:19/07/03 14:43
更新:19/07/04 19:44
書き出しだけ大賞 二期

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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