ぐにゃり

16
17

仕事から帰りソファに座ると、ぐにゃりは膝に飛び乗って丸まる。
僕はぐにゃりの体を撫でる。柔らかくて暖かくてぐにゃりとしてる。その日あった嫌なことは、ぐにゃりがスポンジみたいに吸収してくれる。僕が怒ってる時や悲しんでる時のぐにゃりは、湿った重たいものを吸って、カチコチになって、ズッシリ重たい。

仕事で大失敗した夜、ぐにゃりを抱いてずっと泣いていたら、やっぱりカチコチになって抱えられないぐらい重くなって、僕はうっかり落としてしまった。
ガシャーンと音がしてぐにゃりは粉々になった。
僕は途方にくれて、粉々のぐにゃりを集め、ビー玉みたいな目ん玉を乗せた。それから僕はぐにゃりを柔らかく戻すため、楽しいこと、嬉しいことを毎日話した。
ある夜家に帰ると、いつものぐにゃりがいて、僕の膝に乗るとくるんと丸まった。
それから毎日ぐにゃりを撫でるけど、もうカチコチになったり重くもならない。ぐにゃりも、僕も。
その他
公開:19/07/03 10:05

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容