風瓶(かぜびん)

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君に風を見せてあげよう。
目を凝らしてごらん。これは風瓶。花を花瓶に生ける様に、風を生ける瓶だよ。
星の大気が、地の灼熱に命を吹き込んだ、世界に一つの吹き硝子。朝の陽射しを、夜のしじまを流れる風を、ほんの片時、留めてくれる。

今、君が見ている風は、森に雨を運んだ風。
風は無色透明じゃない。陽炎と昇る風。海を渡る風。稲穂を靡かせ、紅葉と戯れ、雪峰を駆け、新芽に季を告げる風。春には春の、冬には冬の、今日には今日の、明日には明日の。時々刻々、色を、姿を変えるもの。

次はどんな風が吹くだろう。
摩天楼のビル風。砂漠を彷徨う熱風。戦火や砲弾に裂かれ、毒や細菌や放射能に晒され、渦巻き、荒れ狂い、地上を死の灰で撫でた後、はたりと風は止むかも知れない。君の呼吸の一口が、最後の風になるかも知れない。


どうか濁らせないで。これ以上汚さないで。
この星の器で、君と共に生きる風を、見て、感じていてほしい。
その他
公開:19/07/03 00:00
風×吹き硝子 with富山ガラス工房

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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