さぎ立ちぬ

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「俺、空飛べるんだ」
鷺草が自慢げに、ぎざぎざの花翼を広げた。
「沼に根っこ生やしてるのは、世を忍ぶ仮の姿。本当は白鷺の精なんだ」
「へー。すごいね」
毎年聞いてる。僕は指摘をこらえ、気のない相槌を打った。
「そこは、サギなのに雁(カリ)かよ!だろ」
「サギだけに口が上手いね」
「上行くのは反則」
相変わらずうるさい。君の気持ちも解るけどね。
「はいはい。上に行くのは君。花が咲いたら、仲間と北に渡るんだよね?」
野生の鷺草は、開発や農薬で個体が減った。別種の僕に喋るのは、見渡す限り、他に相手がいないから。
本当に飛べたら、仲間を探しに行けるのにね。
「信用してないな?なら証拠見せてやる!」

――バサバサッ!

「ほら、飛んだ」
「あれは本物。詐欺は反則」
やれやれ世話が焼ける。
「途中で仲間に会ったら、教えてあげるから」
来年まで、元気でね。
朱鷺色の花弁を翼に変え、僕は沼を飛び立った。
ファンタジー
公開:19/07/02 21:20
夏の山野草。 鷺草(さぎそう)と 朱鷺草(ときそう)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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