猫の家

8
8

目が覚めると、天井のない箱の中だった。おれは捨てられたのだと理解した。
すると、上から大きな猫の顔が覗いていた。
「まあ、可愛そうなヒト」
猫はおれの襟首を掴んで、抱き上げた。
「ウチに来る?コビトちゃん」
「はなせ!」と喚いた。が、ヒトの言葉がわかるはずもない。
おれは猫に連れ去られた。

猫の家に着いた。不安しかない。食べられるかもしれない。いや、それは予想外の展開になった。
「ミィちゃん。新しいお友達よ」
その猫は、もう一人のヒトを飼っていたのだ。美しいヒトがそこにいた。そのヒトは嬉しそうに迎えてくれた。
「ご主人様はいつも仕事で留守だし退屈だったの」
「おれでよければ。よろしくお願いします」
数年後。そのヒトがおれの子どもを産んだ。
「にゅあ!」
おれはその赤ちゃんを見て気を失った。

目が覚めると、おれは猫だった。
いや、そもそも猫なのだ。
「はいタマ」
ヒトがご飯を運んできた。
ファンタジー
公開:19/07/04 16:56

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容