添い猫

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眠れない夜が続いた。会社の同僚も同じ悩みを抱えていたが、最近、快適な朝を迎えているようだ。話を聞くと「添い猫サービス」を利用しているらしい。おれは同僚から連絡先を聞き、サービスを受けることにした。

就寝時間、玄関で猫の鳴き声がした。ドアを開けると、白猫がおれを見上げている。
「こんばんは。よろしくな」
にゃあ!
ベッドに横になると、猫は添い寝してくれた。刹那、猫の瞳がキラリと光った。すると、おれの意識は猫の瞳の中に吸い込まれていった。

そこは花畑の中だった。あの猫が手招きしている。その先にはベッドがあった。猫はベッドの上にトンと飛び乗ると、気持ちよさげに仰向けになって空を見上げた。おれもベッドに転がり空を見上げた。流れる雲、小川のせせらぎ、小鳥のさえずり……。

朝、心地よい朝日がおれを目覚めさせた。猫は窓から帰ったようだ。
枕元にスタンプカードがあった。
肉球のハンコが押されていた。
ファンタジー
公開:19/07/04 16:54
添い寝

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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