すいこむスプーン

「スイカ食べた？」

元カノから執拗に送られてくるメール
私はどう返してよいのか分からない。

今日だけでも30通は超えた。
しかも、全て同じ文面だ。

あの日…別れを告げた日は
自分の誕生日だった。

彼女がくれたプレゼントは
高価そうなスプーン1本。

見た瞬間、言い知れぬ恐怖で
逃げ出していた。

本能が告げる恐怖感
これ以上表現出来ない。


そして、やはり直感は正しかった。
あのスプーンは何故か机の上にいる。
存在している。
怖くて恐くて仕方ない。



気がつけばスプーン片手に
夢中でスイカを食べていた。

滴り落ちる果汁は
貧血気味だった彼女に似て
薄い血の色をしている。

もうダメだ。
彼女の血を
俺の肉にしてしまった。


着信音が耳元で聞こえる。