未読の本棚

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我が家の書斎に所狭しと並ぶ蔵書の数々、これが私の自慢だ。

「これはなんの本の棚なんだい?」

友人が目をつけたのは、ひときわ古ぼけて見えるやや低い本棚だった。さすが、いい目をしている。

「これはだな、棚に置いた本の内容を忘れさせてくれる、という代物なのだよ」
「なんと!そりゃあすごい!ひとつの本を何度でも楽しめるわけだな」
「そういうことだ。どれ、友人のよしみだ。ここにいくつか君の本を置きに来るといい」

すると友人は少し考え込んだ。

「その棚……本でなくちゃあいけないのかい?」
「ああいや、試してみたが、写真集、雑誌、ノートなど、本の形をしているものならなんでもいいらしい」

友人は、そうかとただ呟いた。

後日、友人はいくつかの本とひとつのノートを棚に置き、私に釘を刺した。

「このノートは見ないでくれよ」

なので非常に残念なことだが、私は今日もそのノートを棚に戻すのだった。
ファンタジー
公開:19/07/03 22:52
更新:19/07/03 23:44
本棚 便利道具

空岸なし

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