転ぶ少年

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その少年は転ぶのがうまい。
何もないところでも、転んだフリができるのだ。
少年はその能力を使って幾度の困難を乗り越えてきた。
例えば学校に遅刻したときに転ぶと、先生は心配し遅刻どころではなくなる。
周りからは、転びのプロ、転びの達人などと言われ持て囃されているくらいだ。
そんな少年が、今朝は腕に包帯を巻いて登校してきた。
「あれ、どうしたんだいその腕」
クラスメイトの一人がいち早く気づき尋ねる。
「ボーッとしてたら転んじゃってね。骨折らしいよ」
「え?転びのプロである君が?」
「ああ。転びのプロであることは間違いないけど、転ばないプロではないからね。」
少年はなぜか誇らしげに言った。
その他
公開:19/07/03 20:59
更新:19/07/03 21:03

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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