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道端に放り捨てられていた地蔵を拾って帰宅した私を、例の如く妻のトゲのある言葉が待っていた。信迎でも慈悲でもなく気粉れでした事だから当然か、邪魔になるし。
とりあえず自室に安置しておこう。
異変が起きたのは翌日の朝。妻が前夜までとは違い、穏やかな雰囲気を醸し出していた。口調も毬を剥いた栗の様に滑らかだ。
まるで何かが抜け落ちたよう……トゲだ、トゲトゲしさが抜けているのだ。
ここで私は思い至る。前夜拾ったのは心のトゲを抜くトゲ抜き地蔵だったのだと。
これも仏の加護か御利益か。今後は安穏な日々が続くのだろう。
が、今一度考えてみる。日々の生活が送れていたのも、これまでの妻がいたればこそではなかったか。
刺激的な言動はともすれば私を奮起させ、過酷な労働にも立ち向かう活力を与えた。突き刺さる言葉は決してトゲではなかったのだ。
すっかり丸くなった妻を見て私は呟く。
「ああ、心の鍼治療はもう出来ない」
とりあえず自室に安置しておこう。
異変が起きたのは翌日の朝。妻が前夜までとは違い、穏やかな雰囲気を醸し出していた。口調も毬を剥いた栗の様に滑らかだ。
まるで何かが抜け落ちたよう……トゲだ、トゲトゲしさが抜けているのだ。
ここで私は思い至る。前夜拾ったのは心のトゲを抜くトゲ抜き地蔵だったのだと。
これも仏の加護か御利益か。今後は安穏な日々が続くのだろう。
が、今一度考えてみる。日々の生活が送れていたのも、これまでの妻がいたればこそではなかったか。
刺激的な言動はともすれば私を奮起させ、過酷な労働にも立ち向かう活力を与えた。突き刺さる言葉は決してトゲではなかったのだ。
すっかり丸くなった妻を見て私は呟く。
「ああ、心の鍼治療はもう出来ない」
ファンタジー
公開:19/03/31 12:39
更新:19/03/31 12:40
更新:19/03/31 12:40
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