パセリの憂鬱

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あの日、僕の頭に森が出来た。

僕は湯のみだ。
コップで冷たい茶ばかり飲んでるご主人は、久しぶりに出した僕に水を注ぎ、何かを挿してキッチンの横に置いた。
何をされたのだ?
隣の計量カップにボンヤリ映る影を見つめる。
頭にモコモコ緑の森が出来ていた。

その森が話しかけてきた。
世話になるよ〜!俺はパセリってんだ。
酷いもんだぜ、あいつら俺たちが皿の隅に残っていても、ご馳走さまするんだぜ!
彩りだ何だって言って買うくせにこの扱いだ!
頃合いを見て、僕は返事した。
ようこそ、ここへ。
でもお陰で僕は、久しぶりに出して貰えたよ。
パセリさんも大変だけど、明日には食べて貰えるよ!

だが1週間が過ぎ、パセリの口数が減って会話も少なくなっていた。
今朝、計量カップの影を見ると頭の上の森は黄色く枯れていた。
パセリさんっ!パセリさんっ!
呼ぶが返事は無い。

空っぽになった僕は、元の食器棚に戻された。
ファンタジー
公開:19/03/31 11:54
更新:19/04/04 17:28

みのる( 愛媛県産、現在広島県に生息。エサを求めて中四国の人里に出没中。 )

心に響く爽やかなお話しをお送りしたいのに、ああそれなのに・・・

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