デトックス

今日も仕事に疲れて帰ってきた。私はぼんやりと鏡を見つめる。浮腫んだ顔。眠気で垂れ下がった瞼。暗い瞳。上司の小言や噛み合わない同僚との不毛な話し合い。スマホには合コンのお誘い。先ほど断りのメールを入れた。疲れた。こんなに嫌な気持ちでパンパンになった姿を見られたくない。
私は剃刀を手にした。それを、顎下に忍ばせた。ピリッとした痛みの後に温かな感触。ベタベタとしたその液体は真っ黒だ。誤って指先を切った時に気づいた。私の体には真っ黒が蔓延っている。
裸になって風呂場で頰を切る。瞼を切る。腕を切る。太ももを切る。……この真っ黒なドロドロが流れていくのが私のストレス解消だ。私の体から真っ黒がなくなって、身も心も綺麗になれるような気がするのだ。
私の体から真っ黒が全部なくなったら、死んでしまうのかな。
首筋に手を合わせる。きっと汚いものが噴き上げて気持ちいいのだろう。覚悟も決まらずに私は掌を切りつけた。