新元号「零和」

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塔京は新元号「零和」の発表で沸き返っていた。

「零の字は我が国最古の書、漫葉集にある漫画が起源です」
矢部総理は厳粛な調子で、新元号の説明を始める。
「天脳って、塔京のすべてを妄想してるっていう人じゃなかったっけ?」
「その天脳が変わったら、あたしたち消えちゃうの?」
塔京始まって以来の天脳の交代劇に、幻視人たちの間でさまざまな憶測が飛んだ。

そしていよいよ、天脳陛下交代の日がやってきた。
新たな天脳がベッドに横たわり、光虚を支える巨大な神木から出る管を、剥き出しの脳へと接続してゆく。
古い天脳がゆっくりと目覚め、新たな天脳が眠りに就いた。
塔内は一瞬「ぶうん」という感じがした。
苦内鳥がひと声、クゥーと鳴いた。
が、何かとんでもない事が起こるかと思ったが、とくに何の変化もない。幻視人たちは皆安心していつもの生活を再開した。

ただし、幻視人たちの額には「0」の数字が刻まれていた──。
SF
公開:19/04/01 13:12
更新:19/04/04 15:17
新元号祭り 塔京

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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