予約の後輩くん(17)―終―

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「先輩。予約と判子お願いします」

次の日の昼、なんでもない顔で私のデスクにやって来た水瀬君は、茶封筒を差し出した。
中には茶色インクの薄手の紙が一枚。
「こ……!?」
婚姻届、と言いかけて、慌てて口を押さえる。
当の水瀬君は私の動揺をよそに、涼しい顔で私の足元にしゃがみこむと、椅子に掛ける私を見上げた。
「この予約は、僕だけですよね?」
「あ、あた、当たり前……」
「よかった」
水瀬君は私の左手を取って薬指の根本にそっと唇を寄せると、やっと本物にできたと笑った。
「先輩」
「なによ」
「大好き」
にっこりと微笑まれて、私は軽い眩暈に襲われる。
この後輩は、本当にとんでもない。
「水瀬君」
「はい?」
けれどこの天然小悪魔に振り回されるのが、もうすっかり癖になってしまったらしい。

私はひとつ大きく深呼吸して、満足そうな水瀬君の左手に顔を寄せると、その薬指に、仕返しとお返しのキスをした。
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公開:19/03/29 00:53
更新:19/04/11 22:47
予約の後輩くん 終わり

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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