血の気の多いマツタケ

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とある山に立派な赤松の林があって、その根元には良いマツタケが生える。
山の地主は商売上手で、乱獲すれば値が下がると毎年厳選した立派なものだけを採るのでマツタケたちには楽園だ。
中でも険しい斜面の赤松のマツタケは元々血の気の多い性格だったが、丸々とした立派な姿に成長し益々喧嘩っ早くなり、そのあまりの罵詈雑言に彼の周りの植物は栄養も取れず枯れてしまうほど。
それでも足りず大きな声で怒鳴り続けた。
急にぴたりと茸が一斉に口を閉ざした。
この世のすべてが自分にひれ伏したかのような気になり、これは気分が良いとますます伸び上がる。
・・・伸び上がる?
「まぁなんて立派なマツタケだ!」
血の気の多いマツタケは、とうとう地主に収穫されてしまった!
「呼んでくれるなんてそんなに俺に見つけて欲しかったのか。」
その時マツタケはようやく知ったのだ。
収穫されないサイズのマツタケが、あの山の主の条件だったのだと。
ファンタジー
公開:19/03/29 00:08
更新:19/10/29 12:51

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