海

あの眩しく輝いた夏の日。私は彼と運命的な出会いをした。
私達はお互いを運命の相手と知り、強く求めた。
しかし現実は残酷だ。両親は私と彼を引き離した。
それ以来、私は家を出ることを許されなくなった。
そんな私の今の希望はこのお腹の子。彼と私の赤ちゃん。
部屋に閉じこもる私の体形を両親は気にも留めない。私が出産したと知ればさぞ驚くだろう。
そしてその日が来た。私は誰にも知られることなく浴室で子供を産んだ。
そう。産んだはずなのだ。
そこには何もいなかった。透明の卵のようなものが私の中から出てきた。
これは何かの間違いだ！私は怖くなり、卵を排水溝に流した。

…ああ、どうやら私は夢を見ていたらしい。あれは想像妊娠だ。
どうやら私は彼と引き離されたことで相当追い込まれていたようだ。

あれから１年が経つ。今思えば、やはりあの卵は私の子供だ。
だって、今の私は全身に鱗が生え、こんなにも海が恋しい…