ハッピーエンド法案

「泣ける物語」全てをハッピーエンドに書き変えることを法律に定めた「ハッピーエンド法案」が実施された。若者に夢を与え働く意欲を高めるだ。『フランダースの犬』のネロは突然改心したアロアの父親に救出され、『タイタニック』のジャックとローズは泳いでボストンに辿り着くのに成功した。『新フランダースの犬』『新タイタニック』を見た若者たちは感動し、「夢は叶うんだ。頑張ろう」とポジティブシンキングをするようになった。
しかし、その一方でこの「ハッピーエンド法案」は常に批判されていた。「これでは文学ではない」「現実を教える事も大切では」と評論家たちは眉間にしわを寄せた。その多くが「ペンは剣より強し」とする作家、ジャーナリスト、文学者らであった。法案を実施した政治家たちは、彼らに軍隊を向けた。「ハッピーエンド戦争」が勃発したのだ。兵士として戦ったのはバンド、演劇、声優、などの夢を掲げた多くの若者たちであった。