怒りの谷

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「◯◯さんの息子さん、高校受かったんだって〜」
電車の中でおばさんたちが甲高い声でしゃべっている。

噂話に花が咲いているようだ。いつもなら車両を移るのだが、あいにく休日で空いた席が見つからない。

ヘッドホンをしていても高い声が耳に刺さる。もう耐えられない。
頭が痛くなってきて、だんだんと意識が遠のいていった。

気がつくと底が見えない谷の前にいた。看板によると、ここは「怒りの谷」だという。
「あなたの怒り、ここで沈めてしまいませんか?」

周りを見ると、いろんな人が谷底に向かって叫んでいた。
「◯◯課長、無茶ばかり言いやがって!」

よし、私も叫んでみよう。
「電車はあなたたちのお茶の間じゃない!」

あー、スッキリした。
気持ちが収まると同時に、元の電車の中に戻ってきていた。

おばさんたちの世間話はまだ続いていた。

まったく、許されるものならこの人たちを谷底に突き落としたいよ。
その他
公開:19/03/29 22:16
更新:19/03/30 07:34
聴覚過敏持ちには辛いんです(泣)

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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