マタタクマ

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『「夢」と「甍」の上部は「蔑」と同じ「羊の赤く爛れた見にくい眼」で、夢は夕暮れ、甍は瓦で覆われている』と書かれた字源.net見ているとA君が「『瞼は世界で一番小さなスクリーンだ』と言ったのは寺山修司だけど、実は小さな緞帳にすぎないんだぜ」と言って、ゆっくりと瞬きをした。
 A君はこの瞬きの間に完全な「睡眠」がとれる特異体質の持ち主だ。
 瞬きは毎分二十回程度が平均といわれている。A君は眠らないので一日28,800回。速度は0.5秒とゆっくりだから、4時間の睡眠が確保されている計算になる。
 寝て起きて一日とすればA君は毎日79年分弱を過ごしている。そして、その瞬きの間に結構長い夢まで見るのだという。
「伊藤潤二に、目覚める寸前に永遠に続く夢を見て化物になる話があったけどね。あながち…」
 面白い夢も多いが、多すぎて覚えていられないんだとA君は笑う。毎日三万の夢を捨てるA君が僕には羨ましい。
ファンタジー
公開:19/03/27 17:18
更新:19/03/27 19:29

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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