知っている匂い

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香木世界大会。
それは、春夏秋冬それぞれの予選を勝ち抜いた香木が集い、その頂点を決める大会。
春の沈丁花、夏の梔子、秋の金木犀、冬の蝋梅。出場木はいずれも香木界で名を馳せた香木の中の香木だ。

大会直前。
金木犀のコンディションは最悪だった。予選で優勝した後、金木犀がグレてしまったのだ。きっかけは観客席から聞こえた子供の無邪気な一声だった。
「トイレの匂いだー!」
会場は爆笑に包まれた。金木犀はその屈辱に耐えられなかったのだ。
タバコの匂いを撒き散らす金木犀は香木ではなく臭木だった。
「うるせぇ!ここに来てやっただけでも有り難いと思えよな。ぷはーっ」
大会の危機だ。やむを得ない。運営スタッフは金木犀に消臭剤と芳香剤をぶち撒けた。
「うわっ、なんだよ!」
そうして金木犀は芳香剤の香りをプンプンさせてステージに上がらされたのだった。

無情にも客席から声が上がる。
「あ、この匂い知ってるー!」
ファンタジー
公開:19/03/27 16:22
更新:19/03/28 20:38
タバコ臭い金木犀 スクー

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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