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春の日、記憶が蘇る。
祖父と手をつないで歩いた桜並木。
そんな日常が、悩みになったのはいつだった。
なぜ、私だけを連れていくのか。お兄ちゃんも連れて行ってと懇願していたのに。
女の子だからかな。初めはそう思った。
ある日祖父が言った。
「いいかい、お前が大きくなった時に思い出すことがあるだろう。その時は、じじぃの愚かさを笑っておくれ」
幼い私には、理解できなかった。
真面目な、温厚な祖父だったから。
そういえば、祖父が花を見ることはなかった。
ただ、私の手を引いて歩くだけ。
疲れたと近くの池公園で腰かけることはあったが。
おかしいと感じたのは、花筏が川面を埋め尽くすころ。
「あの子もキレイに飾り立てられる。見ておいて。ここには私の後悔が沈んでいる」
私は花筏を、じっと見た。
大きくなった今も、癖のように見てしまう。
祖父は旅だったが、私の中ではとげのように刺さっている。
ホラー
公開:19/03/27 02:39

ibara_hime

文章を削る練習をしています。
妄想は得意。感想は苦手。   ・・・・・・です。

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