リベンジ魚拓

8
12

ある漁村に平太という男がいた。精悍な顔立ちで、村の女達に大層人気があった。ある日、平太が家に帰ると中に女が立っていた。
「誰だい?」
女が振り向く。見た事もない美しい女だ。女は瞳からぽろぽろと涙を零していた。
「ど、どうした?」
女は静かに首を横に振り壁を指差す。そこには2尺もある見事な真鯛の魚拓が飾られていた。
「それはこの前獲った奴だ。あんまり見事な真鯛だから記念にな。旨かったぞ」
それを聞いて女は平太を睨みつけ、隠し持った出刃包丁を平太の胸に突き刺した。そして噴き出す鮮血を手で掬い、平太の顔に塗りつけると、手拭いを平太の顔に押しつけた。絶命した平太を横目に女は壁の魚拓を剥がし、平太の顔が写った真っ赤な手拭いを代わりに貼りつけた。
それきり女は行方知れずとなった。
ただ、同じ頃、磯辺で遊んでいた子供が海中で大きな真鯛を見つけた。その真鯛の流す涙が宝石のようにキラキラと輝いていたそうな。
ファンタジー
公開:19/03/28 12:58
更新:19/03/28 16:14
イケメン魚拓 スクー

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容